メルカートにて感じる春。北イタリアの春野菜事情

季節が変わると、メルカート(市場)に出回る野菜の顔ぶれも変わります。品揃えの移り変わりによって季節の動きを感じられ、地元ならではの素材なども満載で見飽きることがありません。

今回は、そんな北イタリアの春のメルカート事情についてご紹介しましょう。

パドヴァの街の中心を構成する建物と商店街

ヴェネト州パドヴァの旧市街地の中心は、ラジョーネ宮と呼ばれる12世紀の建物があります。当時は裁判所として利用されていたものですが、建築当時から、この建物の1階にあたる2本の廊下部分と、建物を南北に挟む広場に向かう軒先も全てが商店街となって機能してきました。

現在もなお、ここは町の中心部の商店街として、約40軒の食料品を主とする店舗が営業しています。肉、魚、ハム・サラミ類、チーズ、惣菜、お菓子、パン、生パスタ、バール、エノテカ等々、食にまつわる様々な業態の店が並びます。

地元ならではの新鮮な素材やチーズやハムなどを、信頼のできる店で買い物ができることから、毎朝、非常に活気の溢れる場所となっています。

商店街の様子。数ある店のなかから、お馴染みの店に通います。 写真:Aki Shirahama

商店街の様子。数ある店のなかから、お馴染みの店に通います。 写真:Aki Shirahama

チーズ、惣菜、ハムなど豊富な食材が溢れんばかり... 写真:Aki Shirahama

チーズ、惣菜、ハムなど豊富な食材が溢れんばかり... 写真:Aki Shirahama

そして、その建物の南北には2つの広場がありますが、南側にあたるエルベ広場(※)には、毎朝野菜や果物を扱う露店が並びます。ここには、50軒ほどの店が立ち並び、季節の香りをたっぷりと味わわせてくれます。このメルカートを一回りするだけで、季節の移り変わりがわかるほどです。

※編集部註......「エルベ広場」という名称は、パドヴァ以外にヴェローナなどでも同じ名称の地域があります。今回は「ヴェネト州パドヴァのエルベ広場」をご紹介しています。

パドヴァならでは、ヴェネト州ならではの素材

春先のこの時期に出回るものといったら、アスパラガスです。ヴェネト州内にいくつか生産地があり、緑アスパラ、白アスパラとも店先に目立ちます。1束は1kgに縛られ、それを立てるように並べてあり、品落ちしたようなものは、大きな箱にバラバラな状態で販売しています。

八百屋の店先。季節の顔が盛りだくさん 写真:Aki Shirahama

八百屋の店先。季節の顔が盛りだくさん 写真:Aki Shirahama

広場には約50軒の八百屋の屋台が並びます 写真:Aki Shirahama

広場には約50軒の八百屋の屋台が並びます 写真:Aki Shirahama

そして、もう一つ春先の市場に出回るものと言えば、グリーンピース。イタリア語では「ピゼッリ(Piselli) 」と言いますが、ヴェネトでは土地の訛りで「ビーズィ(Bisi)」と呼ばれます。リゾットにして食べるのが最も有名な春の一皿ですが、そのメニュー名も土地の訛りで 「リーズィ・エ・ビーズィ(Risi e Bisi)」と言われます。

ちなみに、正しいイタリア語で呼ぶのであれば、「リーゾ・エ・ピゼッリ(Riso e Piselli)」となります。

緑鮮やかなグリーンピース 写真:Aki Shirahama

緑鮮やかなグリーンピース 写真:Aki Shirahama

ヴェネトのカルチョッフィ事情

土地の春を代表する野菜として、大切な素材があります。それは、ヴェネト州というよりも、ヴェネツィアならではの特別な生産物で、「カストラウーレ(Castraure) 」 と言うものです。これは、ヴェネツィアのひとつの島で、農業を主に営んでいるサンテラズモ島のみで栽培されるものです。

いわゆるカルチョッフィ(アーティチョーク)なのですが、ヴェネツィア産のそれは、カルチョッフィの茎から次々出てくる蕾の、最初のもののみを食します。それも大きくなりすぎない頃合いを見計らって収穫しますので、小さくて柔らかく、アクも少ない非常に貴重なものです。

ちなみに、「カストラウーレ」という名前は、イタリア語の「去勢した=カストラーレ(castrare)」という意味から来ています。出回りも少なく、また時期も短いので、非常に貴重な野菜です。

生のままスライスしてサラダにしたり、油で揚げたり、ニンニクやパセリと一緒に煮て、リゾットやパスタの具材に......と、春らしい一皿を演出します。

ヴェネツィア特産のカストラウーレ 写真:Aki Shirahama

ヴェネツィア特産のカストラウーレ 写真:Aki Shirahama

また、カルチョッフィの食べ方として、ヴェネツィア及びパドヴァ地域では特別な食べ方があります。通常「フォンディ(fondi)」と呼ばれているそれは、イタリア語の意味としては「底」。カルチョッフィの大きな蕾の底部分のみをナイフできれいに掃除し、まるで円盤のような形にしてから調理します。

この地域の八百屋さんには、店先にこのフォンディが水に浮いているものを頻繁に見かけます。パドヴァのメルカートでも、露店の裏側に回ると店のおじさんがカルチョッフィを掃除している姿に頻繁に遭遇します。これも季節の風物詩と言えるでしょう。

掃除済みのカルチョッフィ。手前に見えるのが「フォンディ」 写真:Aki Shirahama

掃除済みのカルチョッフィ。手前に見えるのが「フォンディ」 写真:Aki Shirahama

春の山菜ならぬ、野草を食べる

そして、この地方ではお馴染みの春先の野菜......いや、野草があります。

春の野草にもいくつかありますが、まずは「ブルスカンドリ(Burscandoli)」。これはビールの原料となるホップの新芽で、細いアスパラのような形をしています。春先になるとニョキニョキと出てくるホップの茎から、まだ柔らかい新芽を摘んで食します。少々ほろ苦く、これを刻んでリゾットに使ったり、炒めてフリッタータ(オムレツ)の具材にしたりします。

「カルレッティ(Carletti)」というシラタマソウの新芽や、タンポポの葉である「タラッサコ(Tarassaco)」または「ピサカン(Pisacan)」、ケシの若芽の「ローゾレ(Rosole)」や「オルティーケ(Ortiche)」と呼ばれるものも。

春の野草たち。写真はブルスカンドリとカルレッティ 写真:Aki Shirahama

春の野草たち。写真はブルスカンドリとカルレッティ 写真:Aki Shirahama

これらはメルカートでは束で販売しているものですが、本来は自然に生えてくる野草ですので、春先のこの時期に郊外を車で走っていると、袋を片手に草を摘んでいる人たちを見かけるのも珍しくはありません。日本の春先の山菜採りとほぼ同様の光景が、ここでもみられます。

春が近づいてくると、冬野菜よりも少しだけ淡めで趣を異とする、鮮やかな緑の野菜が出回るようになります。春は長い冬の終わりでもあり、一年の中でも特に自然の恵みが嬉しい季節ですね。

写真・執筆:Aki Shirahama

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