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ウィーンの地下迷宮を体感できるワイン居酒屋「12アポストル・ケラー」
世界の「入りにくい居酒屋」を紹介するテレビ番組でも取り上げられた、「12アポストル・ケラー」に行ってきました。ウィーンにはいくつかある、地下深いワインセラーが居酒屋化したもので、ここ以外にもエステルハージーケラーや、アウグスティーナーケラーなど、ウィーン旧市街にいくつかあるワイン居酒屋の一つです。
「入りにくい居酒屋」として紹介されていますが、実際はどのケラー(ワイン居酒屋)も、入り口からいきなり地下に入り、レンガ造りの穴蔵をくぐり抜けてやっと席につけるという点では、「入りにくい」といえるでしょう。その中でも、この「12アポストル・ケラー」は、とりわけ地下からさらに地下深く降りる階段が見つけにくいので、入った後で、中で迷ってしまう人が多そうです。
まずは、この地下深く広がるワイン居酒屋の構造と歴史を感じてみましょう。地下の一部は1100年頃のロマネスク様式の特徴を残している、とても古い地下室です。地上の建物は14世紀には既にあったとされていますが、その後建て直され、地下一階から上は16世紀のゴシック様式となりました。18世紀には地上部分のファサードが改修され、ホーフブルク(王宮)やベルヴェデーレ宮殿など、数々のウィーンの宮殿を手掛けたヨハン・ルカス・フォン・ヒルデブラントがバロック様式で完成させ、現在でも歴史的建造物に指定されています。
ワインを出すお店ですので、日本の杉玉のように、木の枝がぶら下げられています。
地下の部分がワインセラーとして営業しているわけですが、地上一階部分は入り口とトイレのみ。細い階段をつたって降りると、目の前には華やかな地下の世界が広がります。この部分が番組で紹介されていましたが、「十二使徒」の名前の通り、キリストの12人の弟子たちに因んだ内装が歴史を感じさせます。
このランプに注目。6つの面に6人の使徒を描いたランプが二つ、入り口に立っています。
しかし、このケラーはここからが正念場です。この地下一階部分を通り抜け更に奥まった所に、地下二階に降りる階段が隠れています。とても見つけにくいこの階段を降りると、地下二階の大きな広間に出ます。こちらがBrunnenkeller と呼ばれる、現存するウィーン唯一の「地下水採取用地下室」として使われていた部屋です。地下一階より細長く、親密な雰囲気があります。
この階段を降りると、下の広間にたどり着きます。
更に、プライベートパーティーなどで使用できる、「一二使徒の間」が、地下一階と二階の間の目立たない階段を上がった所にあります。こちらも十二使徒をモチーフにした、古風で豪華な内装が印象的で、一歩足を踏み入れるだけで歴史を感じさせます。他にも、階段を少し下がったところにある入口の狭い小部屋など、よく探さないと見つからない部屋もたくさんあり、まさに地下迷宮。
木彫りの十二使徒のモチーフが迫力な、「十二使徒の間」
ウィーン旧市街の地下は、秘密の通路や遺跡、貴族の邸宅の忘れられた物置や使われていない水路などが網の目のように入り組み、全貌は解明からは程遠く、謎に満ちています。ワイン居酒屋で道に迷って、そんなウィーンの地下迷宮の謎に、少し触れたような神秘的な気分になりますよ。
更に奥まった部屋。地下で携帯電話も通じないので、待ち合わせの友だちを探すのにも苦労しそう。
さて、それでは、ワイン居酒屋定番の飲み物とお食事をオーダーしてみましょう。
まずは、白ワインを炭酸水で割った「ヴァイス・ヴァイン・ゲシュプリツター」。こういうグラスに入って出てきます。ウィーン人はホイリゲやワイン居酒屋に入るとまずはこれを一杯。
お食事は、「肉料理盛り合わせ二人前」と「サラダ盛り合わせ」を注文して、女性四人でちょうどお腹いっぱいになる量でした。肉料理盛り合わせは、典型的なウィーンの肉料理を一枚のお皿にまとめてくれるので、手軽に取り分けることができてお勧めです。シュヴァインスブラーテン(ウィーン風焼豚)、Surbraten(塩漬け豚肉焼き)、ソーセージ、血のソーセージ、二種類の肉の入ったクネーデル(団子)、ザウアークラウトと、ウィーンの居酒屋の典型的な肉料理が一気に楽しめます。
また、番組でも紹介されていましたが、バイオリンとアコーディオンの生演奏もあります。どちらかと言うと観光客向けのケラーですので、お客さんの国に合わせた選曲ですが、美しき青きドナウなども演奏してくれます。こういう演奏家には、リクエストをして歌ってもらった場合、5-10ユーロほどのチップを払うのが習慣です。
神秘的な地下の酒蔵で楽しむ、美味しいワインと料理に音楽。地上からは見えない、気取らないウィーンを、ぜひ堪能してみてください。
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ひょろ
- オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。