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175周年の伝統と歴史ある英国船 【キュナード・ライン】
こんにちは、ライター久家です。2015年も残すところあと2週間。2015年は、みなさまにとってどんな1年でしたでしょうか。クルーズ業界においても様々なことがありましたが、アニバーサリーの年でもありました。
2015年は『世界で一番有名な客船』とも言われている『キュナード・ライン』の175周年という記念すべき年でした。
『キュナード・ライン』とは・・
現在は「クイーン・エリザベス」「クイーン・ヴィクトリア」「クイーン・メリーⅡ」の3隻を保有する英国船社。これらの客船でピンと来る方もいらっしゃるでしょう!設立時より英国王室と密接なつながりを持ち、格式ある船としてあまりにも有名です。その気品や伝統は、船内の随所で感じることができます。
【キュナード・ラインの特徴】
◆英国王室とのゆかり
客船としてだけではなく、英国王室の郵便事業を担ってきました。王室とのゆかりの深さから、女王の名を冠することが許された唯一の船社。現存する3隻とも、ロイヤルファミリーが命名しています。船内にはロイヤルファミリーの肖像画が飾られており、船内はまるで美術館のよう。
◆今もなお残る客船の「クラス」
現在の客船は、誰もがどの船内施設でも平等に使える「モノクラス」が一般的ですが、キュナードでは設立当初から存在する「クラス」分けの名残が今も存在します。客室のランクにより利用するメインダイニングが異なり、「クイーンズ・グリル」「プリンセス・グリル」「ブリタニア・クラブ」「ブリタニア・レストラン」と4つのクラスに分かれています。(「ブリタニア・クラブ」はクイーン・メリーⅡ、クイーン・エリザベスのみとなります)「クイーンズ」「プリンセス」グリルクラスでは、専用のラウンジ・テラスや中庭があり、他のクラスの乗客は立ち入りも制限されています。
クルーズツアーで、「グリルクラス」に宿泊されるお客様がいたとしても、なんと添乗員であってもグリルクラスエリアには立ち入ることが難しいほど。王室関係者だけでなく世界中の多くの著名人からも愛され続けており、キュナードならではの差別化が魅力の一つとなっているのかもしれません。
階段の踊り場やエレベーターホールには、キュナードを愛する著名人たちの写真パネルがセンス良く飾られています。
◆ホワイトスターサービス
~一流と言われたホワイトスタークルーズでのサービスを継承~
「タイタニック」を保有していたホワイトスター・ラインは、1934年にキュナード・ラインに吸収合併されました。1945年には「ホワイトスター」の名は消えたものの、大西洋横断航路時代から受け継がれた質の高い「ホワイト・スター・サービス」は、現代のキュナード・ラインにも継承されています。
クルーが並んでお出迎えする「ホワイト・スター・サービス」
「お客さまのリクエストにはノーと言わないこと」などの10カ条の規則や 精神を記載したカードを全クルーが携帯し、その誇りとも言えるバッジを身に着けています。
◆大西洋横断
19世紀~20世紀半ばにかけ、大西洋横断の唯一の足であった客船。その後航空機の時代を迎え、大西洋航路は衰退していきましたが今も定期航路として大西洋横断クルーズを続けているのは「クイーン・メリー2」のみ!175年の伝統を航路にも受け継ぎ、航空機の時代である現代でさえ、いやこんな時代だからこそ
船旅で横断することに、多くの人が価値を見出しているのかもしれません。
【キュナード・ラインの歴史】(参考文献:「キュナードラインの歩み」)
その歴史ゆえ、「洋上初」をいくつも生み出してきたことも特徴で客船クルーズの礎を築いてきました。
1840年
蒸気船での大西洋横断の定期船運航を開始。1番船「ブリタニア」号が就航し、リバプール~ハリファックス~ボストン間の処女航海。同時に、英国の王立郵便運送を担う船としても活躍したことから「ロイヤル・メール・シップ」と呼ばれてきました。
1841年
4番船「コロンビア」号は就航。リバプール~ハリファックス間で大西洋横断最速の称号であるブルーリボンを獲得。
※ブルーリボン賞・・大西洋横断のスピード競争の時代、その最速船に与えられた賞。東回りと西回り部門がありました。栄誉あるこの賞は各船の威信を賭けた競争であり、これによりめざましい技術の進歩に繋がったことでしょう。その後も他船と切磋琢磨し、キュナード・ラインは幾度もブルーリボン賞を受賞します。
1847年
リバプール~ニューヨーク間の航路を開設
1848年
「アメリカ」号クラス客船4隻を造船。洋上初夜間灯火システムを採用
1870年
「アビシニア」号が就航。洋上初のバスルームを完備
1874年
「ボスニア」号が就航。洋上初のスモーキングルーム・女性専用ラウンジ・図書室を完備、電子ベルを採用。
1881年
キュナード初の鋼船「サーヴィア」号就航。全船室に電灯証明を採用。
1884年
「アンブリア」号就航。、キュナード初の冷蔵装置を設置。
1893年
「カンパニア」と「ルカニア」の姉妹船で帆装を撤廃。「カンパニア」はブルーリボンを奪取した。
1907年
「ルシタニア」と「モーレタニア」が就航。史上初の3万トン級客船。(以後いずれもブルーリボン賞を獲得)
1911年
洋上初のジムとサンデッキを備えた「フランコニア」が就航
1912年
「カルパシア」がホワイト・スター・ラインの「タイタニック」の生存者866名を救助(この事故をきっかけにSOLAS条約が締結されることとなる)
1914年
洋上初の屋内プールを備えた「アキタニア」が就航
1915年
「ルシタニア」がドイツの潜水艦の雷撃により沈没。アメリカ人乗客が多かったためアメリカの第一次世界大戦参戦の一因となる
1922年
「ラコニア」がパナマ・スエズ運河を通航した世界一周クルーズへ。12月28日~1923年1月6日にかけて横浜・神戸にも寄港。
1929年
「モーレタニア」がブルーリボンを22年ぶりに奪われる(ドイツ・ロイド社の客船「ブレーメン」が獲得)
1934年
キュナード・ラインとホワイトスター・ラインが合併し、社名が「キュナード・ホワイトスター・ライン」に。同年メリー王妃の命名で、「クイーン・メリー」が進水(1936年デビュー)
1938年
姉妹船「クイーン・エリザベス」進水(1940年完成間近にニューヨークへ)(命名者:エリザベス王妃)
1945年
クイーン姉妹は第2次世界大戦で約160万人の兵士を輸送
1947年
北大西洋航路に復帰。戦後初の大型客船「カロニア」進水(1949年デビュー)(命名者:エリザベス王女 現:エリザベス2世)
1949年
社名をキュナード・ラインに戻す
1951年
「カロニア」が世界一周クルーズを開始し日本にも寄港
1958年
大型ジェット旅客機ボーイング707就航。~1960年代 客船利用者数が航空機利用者数を下回る~
1967年
「クイーン・メリー」・「カロニア」が引退。「クィーンエリザベス2」が進水。
1968年
「クイーン・エリザベス」引退
1969年
「クイーン・エリザベス2(QE2)」が就航、ニューヨークに向け処女航海へ
1975年
「QE2」最初の世界一周クルーズで日本寄港
1990年
キュナード創立150年 QE2がイギリスクルーズを実施。
2004年
「クイーン・メリー2(QM2)」就航(命名者:エリザベス2世)
2005年
フラッグシップを「QE2」から「QM2」へ
2007年
「クイーン・ヴィクトリア(QV)」就航(命名者:コーンウォール侯爵夫人カミラ)
2009年
クイーン・ヴィクトリアとクイーン・メリー2がワールドクルーズで初来日。
2010年
「クイーン・エリザベス」(3代目)が就航(命名者:エリザベス2世)処女航海は29分14秒で完売。
2012年
エリザベス2世の即位60周年を祝し、キュナード3隻が母港サウサンプトンに集結
2015年
キュナード設立175周年を祝し、キュナード3隻が母港リバプールに再集結
©James Morgan for Cunard
日本の歴史で言うと、ペリーが浦賀に来航するより10年以上前にキュナード・ラインが設立され、王室や政府の郵送事業を担い大西洋を横断していたんですね。
そしてこの"老舗船社"は、現在でも『クルーズの代名詞』にもなってます。175年の長い間にも、多くの人々の憧れであり、また愛され続けていることは信頼の証であると言えるでしょう。
【キュナード・ラインのこれから】
「クイーン・メリーⅡ」は2016年春に大規模改装を予定しグリルクラスキャビンやブリタニアクラブキャビンなどの上級クラスの全室改装、さらにシングルルームが新設されるそうです。インテリアは、初代「クイーン・メリー」で使用したデザインのカーペットを採用し初代の船内の雰囲気を踏襲されるようで、船内はタイムスリップしたかのような錯覚に陥るかもしれませんね。
また、2016年の大西洋横断クルーズでは、ラグジュアリーなジャズをお楽しみいただくため、ブルーノート・レコード所属のミュージシャンによるジャズセッションが
クルーズ中毎晩開催されるとか。(西回り2016/8/1発、東回り2016/10/26発を予定)
©James Morgan for Cunard
2016年は3月にクィーン・エリザベス(QE)が6回目のワールドクルーズで3年連続日本寄港を、(横浜・大阪・広島・長崎・鹿児島・沖縄)2017年はQEがワールドクルーズで来日後、神戸開港150周年を記念し初の日本発着クルーズを予定しています♪
175年の歴史と格式ある伝統を守りながらも、新しいものも取り入れ進化を続けるキュナード・ライン。これからもクルーズを愛する世界中の人々を魅了し続けることでしょう。
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クルーズ旅行編集部
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