<後編>「食」のにっぽん丸 総料理長に聞く!惹きつける料理の秘密とは

前回に続き、『「にっぽん丸」の人々を惹きつける料理』について、その魅力はいったい何なのかに迫りたいと思います(前回の記事は下記よりご覧下さい)。

>「<前編>「食」のにっぽん丸 総料理長に聞く!惹きつける料理の秘密とは」はこちらから!

にっぽん丸総料理長 岩本三裕さんに、お話を伺いました。料理長だからこそ知っている裏話も伺うことができました。

mr.iwamoto3.jpg<岩本総料理長>

「にっぽん丸だからできる」料理へのこだわり

料理に必要なもの、それは「センス」と「食材」です。そして、この「食材」については、『にっぽん丸だからこそ』こだわれるものです。私たちが仕入れる食材の多くは、寄港する先々で【現地調達】します。

「今は何が獲れて、何がおいしいか」

地元の生産業者から、旬の情報を仕入れ食材を手配をしているので、新鮮な食材はもちろん、その土地ならではの食材も手に入れることができます。電話1本で「あと2時間の寄港時間だけれど、なんとか届けてほしい」にも対応していただいています。これだけでも、「陸のレストランにも負けない」ことをおわかりいただけると思います。

なぜ、にっぽん丸ではそれが可能なのでしょうか?

理由の一つが、にっぽん丸の船の規模です。にっぽん丸は、大型外国船だけではなく他の日本船に比べてもトン数が小さく、客室がツインベースで満室の場合でも、乗客数は400名様弱です。他の大きな船では、食材が揃わなければあきらめざるをえないメニューもあるそうですが、にっぽん丸の規模だからこそ、食材が揃わないというリスクは低く、予定外の良い食材に出合たら、その場で買い付けることができます。にっぽん丸の厨房は、そういった意味で自由度が高く、独創的な料理に結びつきやすい環境であると思います。

そして、もう一つ。会社の方針です。にっぽん丸(商船三井客船)は、船上の現場に権限を与えてくれています。厨房に関していえば、現場の料理長の決断で進められることが多く、機転を利かせてすばやく行動に移すことができます。

例えば、約3ヶ月の世界一周クルーズでは、日本の食材が手に入らないことがあります。冷凍できるものは日本出航時に積み込みますが、冷凍に弱い食材(例えば野菜)はそうはいきません。どうしても必要な日本の食材は、主要港に空輸して取り寄せます。

また、横浜⇒大洗⇒横浜のクルーズ、そしてその次の横浜発のクルーズが続く場合、料理長が大洗で下船し、列車で築地まで先回りし、築地で食材を仕入交渉。翌日のクルーズに間に合わせる、ということも可能なのです。

にっぽん丸には、私を含め料理長が3名おります。現場での料理長は1年交代のローテーションで、3名のうち1名が「陸のオフィス」に勤務となります。そして、今、私が陸の勤務中です。陸のオフィスにいる料理長は事務方の仕事だけではなく、

・全国の新しい食材を探しまわる
・海上からは見えない、陸での「食」のトレンドにアンテナを張る
・そして、これらを船内の料理長に情報発信する
・食材仕入の手配
・船内売店で好評いただいている「にっぽん丸特製お土産」の新しい商品造成
(カレー、パウンドケーキ、胡麻ドレッシングが絶賛発売中です)

beefcarrimild.jpg

beefcarry.jpgなどをしており、常に船内厨房と繋がっています。余談ですが、乗船期間は「3ヶ月乗船して120日休み」というシフトなので、週5日・満員電車の「陸」の勤務は、とてもつらいです・・(笑)

「船上レストラン」ならではのエピソードもあります。

●大時化(おおしけ)にあたってしまった時のこと

大きく船が揺れた際に、せっかく準備した茶碗蒸しが台車ごと倒れてしまい、セカンドシーティング(2回制の夕食の2回目)のお客様全員分を作り直しをすることになりました・・

限られた時間の中で、約200名分の茶碗蒸しを如何に早く作れるかを、厨房スタッフと知恵を出し合い、奮闘し、なんとかギリギリ間に合わせることができました。これは、陸のレストランではなかなか経験しないことでしょう。今思い返しても、よくやったなぁと思います。

これらの経験から、いざという時の「裏ワザ」も習得できました(笑)

●翌年のクリスマスディナーの撮影

たくさんの航路の中でも、ディナーをお目当てで参加するお客様が特に多いのは、クリスマスクルーズかもしれません。にっぽん丸の翌年度のパンフレット制作のために、1月にはメニューを考案し写真撮影が行われます。しかし、翌年の流行やトレンドは、その時点では知る由もありませんので、メニューの考案に苦慮します・・。

クリスマスクルーズのパンフレットは夏頃に出来上がりますが、冬の食材で作るクリスマスメニューは、冬ではなければ食材が揃わないという問題が出てくるためなので、仕方ないですね。パンフレットに載せたメニューから大幅修正はしないものの、細かいところは、その年のクリスマスに合ったものに変えていますので、この場でお伝えさせていただきます(笑)

2015Xmasdinne2(image).jpg<クリスマスメニュー イメージ>

最後に。

私たち料理長をはじめとした厨房スタッフは、普段は、なかなかお客様の前に出ることはございません。そのため、メートルディー(レストランマネージャー)やウエーターに、お客様の様子を確認したり、下げたお皿でお食事の進み具合を見て、お客様のご満足度を確認しています。

ロングクルーズやチャータークルーズの際は、表に出て、挨拶をさせていただく機会があり、お客様から「おいしかったです」「ありがとうございます」と直接声をかけていただくことがあります。照れくさい気持ちもありますが、素直にうれしく思います。きれいに召し上がってくださった後のお皿や、お言葉一つ一つが、長い間私を厨房に立たせ続けてくれた理由だと思います。

どの航路のクルーズでも、こだわりを持って料理を提供しております。ぜひ、洋上での素敵なディナータイムを、にっぽん丸でお過ごしください。

maindinning_Mizuho2.jpg<にっぽん丸 メインダイニング>

いかがでしたでしょうか。岩本総料理長のお話から、料理の「見た目」「味付け」「食材」への強いこだわりが伝わってきました。洋上の一流レストランである、にっぽん丸のダイニングですが、たくさんの方がリピートする理由は、これだけではないように思います。

料理を通した「やさしさ」、そして「おいしい笑顔が見たい」「目で見て楽しんでほしい」「食材の話題で盛り上がってほしい」など、一つ一つの料理に、シェフたちの「思い」が詰まっているからではないでしょうか。

インタビューに、笑顔で答えてくださった岩本総料理長の気さくなお人柄も、料理をおいしく、魅力的にする「調味料」なのかもしれません。

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