地中海の光を描いた『マヨルカ島のレオ・ゲステル』展

『マヨルカ島のレオ・ゲステル』展

オランダのアヴァンギャルドを代表する画家、レオ・ゲステルの絵画展が北ホラント州のクラーネンブルフ美術館で開催されています。ゲステルが1914年に滞在したスペインのマヨルカ島で、暖かな陽射しをうけながら描いた作品の数々が一堂に会しました。

目次

新しいスタイルを追い求めたレオ・ゲステル

『マヨルカ島のレオ・ゲステル』展

レオ・ゲステル (1881-1941) は、「ベルゲン派」と呼ばれるオランダの表現主義を主導した画家です。

20世紀初頭の画家たちは、それまでの科学的な写実主義と決別し、人間の心が感じる色や形を表現しようと試みました。フォーヴィスムやキュビズムと時を同じくして、ゲステルもまた心の中の世界を、風景や人物などのモチーフに託して描いています。

『マヨルカ島のレオ・ゲステル』展では、1914年にスペインのマヨルカ島を訪れたゲステルが、4ヶ月間にわたる滞在中に制作した油絵やスケッチが展示されています。マヨルカ島をテーマにした絵画展が開催されるのは初めてのことで、地中海の眩い陽射しが、ゲステルにどれほど大きな影響を与えたのかが紹介されています。

表現主義やフォーヴィスムの力強い筆致や色彩が好きな私は、ベルゲンに住む友人を誘って、アムステルダムから1時間ほどのクラーネンブルフ美術館を訪れました。

軽やかなデフォルメと地中海の色彩

『マヨルカ島のレオ・ゲステル』展

展覧会の入口で、真っ先に目に飛び込んできたのは、赤やピンク、黄色、緑などの色面がリズミカルにちりばめられた『庭』(上写真)です。暗闇に浮かび上がるイルミネーションのような作品に、まだ1枚目にも関わらず、すっかり心を掴まれました。

左:『マヨルカの夕暮れ』/右:『マヨルカのマリ岬』
<左:『マヨルカの夕暮れ』 ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館/右:『マヨルカのマリ岬』個人蔵>

南仏の太陽に心を奪われて、一心不乱に絵筆を動かしたゴッホのように、ゲステルもマヨルカ島の光の虜になりました。4ヶ月間にわたり、マヨルカ島の町や港、丘、果樹園、オリーブ畑などを精力的に描き続けました。

左上:『風景』/右上:『パルマ港』/下:『マヨルカの風景』
<左上:『風景』 トゥウェンテ国立美術館、右上:『パルマ港』 個人蔵、下:『マヨルカの風景』 個人蔵>

数々の作品を眺めながら歩を進めると、ゲステルの画風が変化していく様子を知ることができます。当初はより具象的に描かれていた建物や木々のモチーフは次第に形を失い、カンヴァスの上には、ゲステルの心のレンズを通して捉えられた心象風景が浮かびあがります。

『マヨルカ島のレオ・ゲステル』展

マヨルカ島に行く前の作品と比べてみると、その画風の変化がさらによく分かります。後期印象派のようなタッチで描かれた1911年の『秋の樹』(写真左)に対し、『マヨルカ』(写真右)の木々は、曲線を活かして抽象的に描かれています。

クラーネンブルフ美術館は今回の展覧会に際して、「ゲステルはマヨルカ島で前衛画家としての真骨頂を発揮した」と讃えています。地中海の光に魅了されながら、自分だけの画風を模索しつつ、琴線に触れた風景をひとつひとつ作品に昇華させたゲステル。その芸術家としての眼差しと情熱に胸を打たれました。

ベルゲン派の歴史を未来につなぐ美術館

クラーネンブルフ美術館

クラーネンブルフ美術館(Museum Kranenburgh)は、かつてのベルゲン市長の邸宅を改装し、新館や彫刻庭園を整備して1993年4月にオープンしました。ベルゲン派の作品を始め、1900年から現代アートまで3,500点のコレクションを所蔵しています。

ベルゲン派の輝きを受け継ぐべく、1947年にはベルゲンに暮らす芸術家たちが「ベルゲン芸術家センター」を創立しました。現在は約200人の芸術家が参加し、クラーネンブルフ美術館に作品が展示されているほか、ミュージアムショップでは気に入った作品を購入・レンタルできます。

クラーネンブルフ美術館

Museum Kranenburgh

  • 住所:Hoflaan 26, 1861 CR Bergen
  • アクセス:アムステルダム中央駅よりDen Helder行きインターシティで37分Alkmaar下車、Bergen Plein行きバス166番で13分Bergen Plein下車徒歩10分
  • 営業時間:10:30~17:00
  • 定休日:月曜
  • 公式サイト:Museum Kranenburgh

北海のビーチも楽しめるベルゲン

ベルゲン

アムステルダムの北35kmに位置するベルゲンは、歴史的な建造物や緑豊かな住宅街、牛や羊のいる農村風景を楽しめる表情豊かな街です。

ベルゲンに暮らす私の友人は、いつもおすすめの場所にドライブに連れていってくれます。北海を眺めながらテラスでビールを飲んだり、海岸沿いに延びる砂丘でピクニックをしたり、牧草地をサイクリングしたり、アムステルダムでは味わえない経験ができます。

チューリップ

今回は『マヨルカ島のレオ・ゲステル』展の帰りに、ちょうど満開だったチューリップ畑に行きました。目の覚めるような赤や黄色のチューリップは、いつ見ても心がいっぱいになります。

『マヨルカ島のレオ・ゲステル』展は2022年9月18日まで開催されています。アルクマールのチーズ市を観光される際は、ぜひお隣のベルゲンにも足を伸ばしてみてください。

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Kayo Temel

オランダ在住。アムステルダムの美術アカデミーで絵画を学び、イラストレーターとして活動中。20年の在蘭経験を活かして、オランダを満喫するためのローカルな情報をお届けします。

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