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ロックダウン段階的解除中【フランス】の状況(2020年6月15日現在)
対コロナ外出制限措置が、5月11日から段階的に解除に入ったフランスの状況をご報告します。
3月17日から始まった外出制限期間は、55日間に及びました。発令当初は、急増する感染患者で医療崩壊寸前だったのをなんとか踏みとどまり、厳しい制限期間中も致命的な混乱なく、持ちこたえた感のあるフランスです。ロックダウンが長引くことによる社会経済への弊害を避けるため「ウィルスと共に生きる」生活へと舵をとった、解除開始から現在までの約一カ月間をまとめてみました。
目次
外出制限解除の基本方針
5月11日の外出制限解除に先立ち、フィリップ首相が述べた基本方針は以下の3点です。
- ウィルスと共に生きる
ワクチンや集団免疫の形成が出来るまでは、ウィルスと共存しなければならない。そのためには、衛生管理で防御(ソーシャルディスタンス、マスク、手洗い等)を徹底しながら、検査数を増やし、陽性者を隔離してウィスルの拡散を絶ってゆく。 - 段階的に解除する
生活は即座に以前のようには戻らない。毎週状況を確認しながら「段階的に」解除に進む。 - 地域毎に解除条件に差をつける
地域によって感染状況は大差がある。ウィルス拡散状況と医療機関の緊迫状況を考慮して、各県を赤(危険)と緑に色分けし、解除の内容や条件に差をつける。
この地図が5月11日解除開始時のフランス色別地図です。みごとにフランスが2分割されました。赤地区のイル・ド・フランス地域、フランス北部、東部、海外県マイヨットでは、解除条件が緑地区より厳しくなります。
そして、5月28日の会見で更新された地図がこちら。赤地区はゼロになり、イル・ド・フランス地域、海外県ギュイアンヌとマイヨットが、オレンジの要注意地区に。感染状況は、期待以上に改善されていました。危惧されていた感染第2波は、解除開始1カ月を経過した現在も起きていません。
解除は3段階の日程(①5月11日-6月1日 ②6月2日-6月21日 ③6月22日- )に設定され、段階別に解除内容が細かく指示されています。
そして、6月14日のマクロン大統領のテレビ演説で、6月15日からイル・ド・フランス地域も緑地区と認定され、フランス本土は統一条件でコロナ対策が進められることになりました。外出制限発令時に「戦争」という言葉を用いた大統領は、「コロナとの戦い」最初の勝利宣言と同時に、ウィスルの消滅はまだ先になるので、引き続きの衛生管理を強く求めました。
では、フランスで実施されている段階的解除の内容の一部をご説明します。
移動可能範囲
「自由になった!」と誰もが実感したのは、制限下の外出時に必須だった「特例外出証明書」を持参しなくても良くなったからでしょう。開始当初は用紙をプリントアウト、後にスマートフォン版もでましたが、毎回の項目記入が、とにかく面倒だったのです。
解除第1段階では、移動可能範囲は、自宅から円周100km以内と規定されていましたが、第2段階からは、移動距離の制限はなくなりました。
立入禁止だった海岸も解禁されたので、晴天の日はこの通り。「外出制限が解けたら海が見たい!」と言っていた人も多かったので、今年の海辺は格別でしょう。でも、1mのソーシャルディスタンスをお忘れなく!
学校の再開
教育機関の再開は、一番議論が活発で複雑でした。学校再開は新年度9月だろう、という多くの予想に反して、解除第一段階から、一早く学校の再開を決行したフランスには、しかるべく諸事情があります。
フランスでは共働きが基本なので、幼い子供のいる家庭の両親が職場に復帰するには、学校や託児所の存在が不可欠だという経済的理由。ネット授業のレーダーから消えてしまった子供たちを、一刻も早く教育現場に取り戻したいという社会的理由。移民系仏人も多く、生活格差から生じる社会不安(デモの暴動化や犯罪増加など)も深刻化している現在、平等な教育は対策の要。教育システムから離脱した子供たちは、いずれ社会からはじき出される確率が高いのです。
5月11日からの学校再開は、まず、幼稚園と小学校の一部からスタートしました。小学校は一クラス最大15人、幼稚園は10人まで。クラスの人数が多過ぎる場合は、2グループに分けて、登校曜日で入替制。優先されるのは、医療関係者の子供、ハンディキャップのある子供、様々な理由で遠隔授業を受講できない子供、学年では、幼稚園年長、小学校1年生と5年生(最終学年)。
翌週には、緑地区の中学校、第2段階の6月2日からは、フランス全土で小中学全学年が再開されるよう指示されました。ただし、1-2段階では、登校は強制ではなく自宅学習継続も可能でした。現場では、厳しい再開基準条件に対応出来ずに開校が遅れたり、諸事情で教師が現場に戻らなかったりという問題も報告されています。
第3段階の6月22日からは、小中学校においては全生徒の登校が義務となります。
高校は、第2段階より再開指示ですが現在でも閉校のところが多く、大学は、遠隔授業のみで今年度を終了し、9月からの新年度の指示を待つことになります。
仕事、集会の再開
職場では、引き続き、可能な限りのテレワークが推奨されています。解除を機に、完全な自宅勤務体制は終了しても、出社は交代制という会社が多いようです。そして「こういう勤務形態の方が能率が上がる」と感じている人も、かなりの数になるようです。通勤ラッシュの電車に駆け込んだり、車の渋滞で大気汚染を生み出しながら、ストレスを溜めて仕事場に赴くことが本当に必要だったのかは、今後の議論となってゆくことでしょう。
公共の場での集会は10人までと制限されています。
商業店舗、文化施設、スポーツ施設等の再開
待ち望んでいたブティックやレストラン、娯楽施設等の解除も徐々に始まりました。
第1段階で、小売店舗、市場、小さな文化施設、第2段階で、大型ショッピングモール、カフェ、レストラン、バーなどの飲食店が条件付きで再開。(緑地区に認定されるまでパリ地区では、飲食はテラス席のみ)飲食店内は、最低1mのテーブル間隔、1テーブル10人まで、従業員はマスク着用が義務付けられています。
商業店舗や各施設でも、顧客の流れを一方通行にしたり、人数制限することが推奨されています。写真は、ショッピングモールの玄関、左側が入口、右側が出口です。
第2段階からは、映画館、プールやスポーツジム、劇場、美術館、遊園地(最大5000人まで)、キャンプ場やバカンス村が再開可能。しかし、身体の接触を伴い集団で行うスポーツは禁止。ディスコ、カジノ、スタジアム、競馬場など大人数が集まる場所も引き続き閉鎖。5000人以上のイベントは7月末まで禁止です。
国際的な大イベントでは、2020年5-6月開催予定だった、カンヌ映画祭は今秋に他の映画祭とのコラボ案、全仏オープンテニス・ロランギャロスは9-10月に移動、6-7月開催予定だった自転車ロードレース、ツール・ド・フランスは8-9月に移動が決定しています。コロナ状況が改善して、今度こそ実現されることを願いたいですね!
マスク狂騒曲
フランスのコロナ対策で混乱を極めたのはマスクです。
初期の政府公式見解では、マスク着用は効果がないと発表されていましたが、途中一転して、マスク奨励に変わりました。これは、国内のマスク在庫数が大幅に不足していたので、混乱回避が目的だったともいわれています。その後、多くの国内企業が布マスク生産に参入しましたが、今度は布マスク在庫過多になっているなど、マスク問題は波乱が続いています。
使用する国民側も、マスク文化のないお国柄なので、どんなマスクを、どこで入手して、いつ着ければよいのか、途方に暮れた人も多かったようです。市町村や企業が、独自に発注したマスクを住民や社員、顧客に配布するというケースも多くみられるようになりました。
先日は、ついに我が家の郵便箱にもマスクが配布されていましたが、その形は、、、鴨のくちばし型!!これを着けて外出する勇気はありません、、、が、ありがたくキープさせていただきます。
いち早く、斬新なオートクチュールマスクで世間をあっと言わせたのは、やっぱりあの方。ファッション界の風雲児ジャンポール・ゴルチェ氏のマスクはこちらをご覧ください。
さいごに~ 制限中どう過ごしていた?
55日間もの間自宅にこもって、人々は一体何をしていたんだろう?
その疑問に明確に答えてくれるのが、外出制限期間中、購入量が大幅アップした商品たち。ゴム手袋、漂白剤、石鹸などの掃除用品。小麦粉、ベーキングパウダー、砂糖などパンやお菓子作りの材料。
なーんだ、うちと同じじゃないの!せっせと家を磨き、時間をかけてパンやお菓子を作り、焼きたてを味わいながら「こういう生活って、、、」と自問自答した人も、きっと大勢いるのでしょうね。その答えはいかに?
世界中で、まだまだ猛威をふるっているコロナウィルス。秋以降に感染第二波が起きるという説もあり、これからも気が抜けません。皆さまもどうぞ、お気をつけて。
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