【コロナ対策】イタリア中部フィレンツェの生活風景、頑張る小売店(2020年4月6日現在)

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<大型スーパー、コープの前に長い行列を作るフィレンツェの一般市民。入場に1時間から2時間を要する>

新型コロナウイルスのため全世界で最も心配された国の一つであるイタリアからこのテーマに関連する現在の様子をお伝えします。3月前半発布の首相令による移動制限、扱う製品項目により商業小売店販売活動の休止、自粛隔離制限が定められてから約一月が過ぎたイタリアですが、今回私がお伝えしたいのは、そのような状況下にあるイタリア中部のフィレンツェその周辺の様子です。一般市民の生活に深く関わる生活必需品を提供する小売店などは営業を続けており、その活動風景から一般市民の生活の様子が垣間見られると思います。

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<青空市場の八百屋さんの奥さん。食料品の屋台のみ出店>

目次

地理的な被害状況の差

まず前置きとなりますが、この国の際立った特徴としては感染による被害地域がくっきり分かれている点です。縦に長いイタリアの中央部に横たわるアペニン山脈より北部にあるロンバルディア州やヴェネト州を含む北部と、その南にあるトスカーナ州以南では被害状況が大きく異なります。つまり、イタリア北部に感染者が多く集まり、イタリア中部や南部では感染者数が圧倒的に少ないのです。

そのため当然病院内の状況もかなりの違いがあり、一般市民の生活はそれらに比例した緊張感や落ち着きを持つと言えます。北イタリアに甚大なる被害が集中しており、なんとか状況を保持しているとはいえ、北イタリアの病院に最優先に数多くの物資が送られ、市民の生活にもう少し緊迫感があるようです。ですのでフィレンツェではまだ幸運といえる現状を悪化させないよう、今の体制を維持し一刻も早く終息するよう、市民はそれぞれに最大限の努力をしている様に見受けられます。

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<現在の青空市場のそれぞれの屋台の距離感。普段はスペースを埋め尽くすように多くの屋台が集まる>

首相令から約一月

伊首相の辞令発布時の国民に対する対応は実に人々に安心感をもたらす人間的な柔らかさと毅然さの両方を持つものであり、実際に多くのイタリア人に好印象をもたらしました。「まずは国民の健康を第一に。」を掲げた首相の表現には、後の経済的不安はあるものの、とりあえず基本的生活が保障されるであろうという信頼感をも含んでいました。

そのためか、他国の先例を見ずしてイタリア国民は首相令に対して反論なくルールに従って静かにリスペクトを持って今日まで生活してきているように思われます。ただ、この規制の意味するところ、非常事態を理解するのに時間がかかった人というのは数多くいて、最初の2週間ほどは巡回する警察に注意される市民が後を絶ちませんでしたが、今ではすっかり理解も定着し、落ち着いてきたように思われます。

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<地域の八百屋さん>

買い物はどうするのか

さて、移動規制のある現在、人はどのようにして食料や必需品を手に入れるかですが、

  • 1. まずはスーパーマーケットに行く
  • 2. もしくは近隣の小売店に出向く
  • 3. そうでなければ配達を頼む

この3つの手段があります。

イタリアは地元の商店街、小売店がまだまだ元気なところがあり、多くの奥さんは行きつけの肉屋や魚屋をもつのが常です。そのようなあたりも手伝ってか、近所の顔馴染みさんのことをお店の人がよく把握していたり、店を挟んでお客同士がお互い顔見知りであったりという普段からの地元のコミュニケーションの存在が珍しくないところがあります。お年寄りの多いイタリアです。この一月の間に気の知れている行きつけの店に配達を頼む人が急増し、市からの要請もあり、多くの小売店がそれに力を入れるようになりました。

この写真の地元に根付く小さな八百屋さんは朝8時半から14時くらいまで通常営業、午後は配達というリズムで活動しています。配達はなるべく地域に絞って1日20件くらいこなすそうです。ただ、かなり大変であるようで、「イースター祭以降(4月12日)この状況が続く場合、店は閉めて配達に専念するつもり」と話してくれました。小売店の方もこの活動リズムで一月近くを過ごし、かなり負担を感じ始めている様です。

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新聞販売店 エディーコラ

庶民の拠り所となる新聞販売店エディーコラ ( EDICOLA )。毎日家のすぐそばで新聞を購入するのが何十年も昔から習慣であった世代を中心に、エディーコラという店やスタンドには大勢の人が立ち寄ります。それは人の日常生活必需品が色々集まっているからで、新聞雑誌をはじめ、バスのチケット、印紙、宝くじやサッカーくじなどを中心とし、ちょっとした子供のおもちゃ、文具を扱うところがあり、タバコ屋と合体しているところなどもありますからそのニーズは非常に高いのです。

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<店の前で人が並ぶ様子。店内には一人一人入場可能>

移動規制が始まってからすぐに、場所によってはエディーコラでもマスクを販売する様になりましたし、庶民もエディーコラに尋ねていました。「マスクは扱ってるかしら?」ここなら何か知っているかも、もしかしたらあるかもと地域住民が頼りにする場所なのだというのがわかります。

私の家のそばのエディーコラでは、近隣の女性がボランティアでマスク作成を始め、募金という形でこの新聞店を介してマスクを配っていたそうです。一つ2ユーロ(=約240円)以上で募金を集めていましたが、なんとその集金額は2,000ユーロ(=約24万円)にも達したとのこと。ただ、その後彼女が作成するマスクの配布は市により管理されることになりました。理由は均等にマスクを配布できるよう市が管理することになったとか。人によっては多めに持っていく人もいたからなんだそうです。その様なエピソードをエディーコラのご主人が話してくれました。

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肉屋さん

トスカーナの食卓の王様はなんといっても肉です。この状況下、人々は家庭でいろいろな肉料理に挑戦したり、庭にバーベキュー施設がある恵まれた人はもちろん気晴らしに活用していることでしょう。肉屋のご主人は移動制限やレストランなどの営業規制が始まったすぐの頃、卸で扱う肉の流通量や小売店での売り上げなどに影響が出ていると話してくれました。それでも地元の人は足繁く通うわけですから店頭に並ぶ肉類の補充量は通常と変わらない様子に見えました。

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ただここ最近は肉屋の皆さんもとても疲れている様子ですし、多少の緊張感も感じられます。この肉屋には通常店頭に3人出ていますが、気のいい男性ばかりで、普段はジョークの一つも飛ばすのですけれど、最近はマスクをしながらですからそれもままならず、黙々と作業に従事しています。店は8時半ごろ開店し15時まで営業。その後配達に入る様ですがその数はなかなかのもので、およそ15km圏内の各家庭や施設に配達をしている様です。

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パン屋さん

新聞販売店や肉屋と並び、人が多く集まるのはパン屋です。概してイタリア人は食卓にパンを欠かさない人々。消費量が圧倒的に多いため、行列ができやすいです。店の外には番号札発券機が設置されて、それを手に購入客は外で待機、一人一人店内に入ります。

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パン屋さんというところは心がほっとするところと言えます。大抵の場合、闊達とした笑顔の素敵な女性たちが出迎えてくれます。今日は写真撮影のリクエストにも答えてくれて、「マスクの下の笑顔が伝わるかしら?」といいながら4人でポーズを取ってくれました。

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地域でどのような店が営業し住民の生活を支えているのか

私の住む地域はグラッシナ ( Grassina ) と呼ばれるフィレンツェ中心部から約7km離れた隣の市の一つの集落といえる小さな町です。フィレンツェ市が人口約38万人、隣に位置する私の住む市はおよそ25万人。その中の13あるうちのひとつの地域で、面積2平方kmほどの広さの町に約8,700人の人々が住んでいます。この様な規模の町にどのような小売店が営業と配達に従事しているかのリストを挙げてみました。

  • 食品及び日用雑貨店・・・4店舗
  • 新聞販売店・・・・・・・2店舗
  • パン屋・・・・・・・・・2店舗
  • 肉屋・・・・・・・・・・2店舗
  • 魚屋・・・・・・・・・・1店舗
  • 八百屋・・・・・・・・・1店舗
  • ペット店・・・・・・・・1店舗
  • レストラン・・・・・・・2店舗
  • 煙草屋・・・・・・・・・2店舗
  • 薬屋・・・・・・・・・・2店舗
  • 文具屋・・・・・・・・・1店舗
  • コーヒー専門店・・・・・1店舗
  • スーパーマーケット・・・1店舗
  • ハーブ専門店・・・・・・1店舗営業のみ
  • 金物店・・・・・・・・・2店舗営業のみ
  • 電話通信専門店・・・・・2店舗営業のみ(予約要)
  • ランドリー・・・・・・・1店舗営業のみ
  • ピザ屋・・・・・・・・・1店舗営業のみ
  • ケーキ屋・・・・・・・・1店舗営業のみ
  • 眼鏡屋・・・・・・・・・1店舗営業のみ

上のデータは市からアップされているもので、少しでも人の動きを制限できるようにとの対処から多くの地域で同様の活動スタイルやコラボレーションが見られます。買い物は家族に一人のみが出かけ、最高でも週に1度か2度程度の買い物に留めるようにとも呼び掛けられています。そのほか電気製品専門店や花屋など、その他およそ考えられる必要なものは配達のみで近隣の町から対応してもらっています。とりあえず基本的な生活は静かに穏やかに成り立っています。もちろん今できないこともたくさんありますが、普段何気なく過ごしてきた日常に心から感謝する春となりました。

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まつこ

イタリアのフィレンツェ観光ガイド、通訳として既に四半世紀。イタリア人夫とハーフ達を相手にまだまだ子育て奮闘中。食事の美味しい、自然豊かな、太陽光の心地よいイタリアが大好きです。

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