【オランダ】アムステルダム市立美術館が誇る日本のポスターコレクション展

アムステルダム市立美術館では、アンリ・マティスやジャクソン・ポロック、カレル・アペルといった近現代美術の常設展とともに、数々の企画展が開催されています。今回は2020年2月まで開催されていた、日本のポスター226枚が一堂に会した『Colorful Japan』展をご紹介します。

目次

ミュージアム広場に浮かぶ巨大な「バスタブ」

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アムステルダム市立美術館 (Stedelijk Museum Amsterdam) は、フィンセント・ファン・ゴッホやワシリー・カンディンスキー、マルレーネ・デュマスといった近現代アーティストの作品9万点を収蔵する美術館です。

美術館は1874年に設立され、現在の本館は1895年に建築家のアドリアン・ヴィレム・ヴァイスマンによって設計されました。赤レンガのファサードと尖塔が美しい、ネオルネサンス様式の建築です。

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1945年から1954年にかけての拡張工事を経て、2003年からは更に大規模な修復工事が行われました。2012年の再オープンでお披露目されたのは、真っ白で巨大なベンサム・クロウェル・ウィング(屋根の部分)です。広大な展示スペースを備えたこの新しいウイングは「バスタブ」の愛称で親しまれています。

アムステルダム市立美術館では常設展と併せて、複数の企画展が同時開催されているので、一度に様々なアートに触れられます。

日本のポスターコレクション展 『Colorful Japan』

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日本のポスター226枚が一堂に会した『Colorful Japan』は、2012年に他界したグラフィックデザイナー綿野茂へのオマージュ展として企画されました。オランダに居を構えた綿野茂は、数多くの日本人アーティストと、アムステルダム市立美術館との架け橋として尽力しました。

綿野茂の助力と、さらには2018年のDNP文化振興財団からの92点の寄贈によって、アムステルダム市立美術館の日本のポスターコレクションは、ヨーロッパで最大規模のものとなりました。

日本のグラフィックアート81年の歴史を凝縮

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白一色に塗られたヴァイスマン本館で、アーチ型のエントランスから鮮烈な色彩が目に飛び込んできます。

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日本の紅にいざなわれてアーチをくぐると、壁一面にびっしりと貼られたポスターが、お祭りにも似た賑やかさで迎えてくれます。

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戦後の日本グラフィック界を牽引した大智浩の企業広告ポスターをはじめ、亀倉雄策による1964年東京オリンピックのポスターや、1970年代の日本で活躍した石岡瑛子によるパルコのポスターなど、1937年から2018年にかけての作品が並んでいます。

田中一光のシンプルな和モダン、「日本のエッシャー」とも称された福田繁雄のシニカルなデザイン、永井一正の手による大胆さと繊細さの共存、さらには勝井三雄、U.G.サトー、横尾忠則の作品まで、日本を代表するそうそうたるデザイナーの作品を間近に鑑賞できます。

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山城隆一 が1955年にデザインした森林保護を啓発するためのタイポグラフィーポスターです。「森」と「林」を様々なサイズで配置し、その隙間で木立を吹き抜ける風を、下の余白で森林破壊の脅威をを表しています。

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こちらの壁一面は横尾忠則のポスターに捧げられています。横尾忠則がその名を馳せるきっかけとなった1965年のポスター『Tadanori Yokoo, Made in Japan』も展示されています。

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歌舞伎や能など日本的なテーマも多く、特に私は日本の「黒」や「線」の技巧を生かした作品に魅かれました。オランダの美術学校で油彩を学んだ際、黒は奥行きを遮る色として避けられていましたが、私にとっては墨や漆の黒こそが、奥行きを表す色に感じられるのです。

「カラフルな万華鏡」に酔いしれる

『Colorful Japan』では、ベンチに座ってゆっくり作品を眺めたり、冊子にまとめられたキャプションを読んで理解を深めたり、気に入ったポスターの写真を撮ったりと、思い思いの楽しみ方ができます。

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アムステルダム市立美術館のキュレーターであるカロリーン・グラーゼンブルフ氏は、『Colorful Japan』は文字通り、色とともに爆発する。床から天井まで、びっしりと貼られたポスターに囲まれる人々は、万華鏡のような世界に没頭するだろう」と語っています。イラストやグラフィックデザインの仕事をしている私にとってはさらに、尽きることのないアイディアやヒントが詰めこまれた宝石箱のようでした。

ジャンルも年代も異なる多彩なポスターは、各々が巧みな意匠を披露しつつ、また一方では226枚が足並みをそろえて華やかなアートを創りあげています。良いデザインは、あらゆる条件を超えて恒久的に美しいものなのだと感銘を受けました。

多彩な企画展を一度に楽しめる美術館

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『Colorful Japan』を満喫した後は、ほぼ同時期に開催されていた『シャガール・ピカソ・モンドリアン~パリの移民画家』展も鑑賞しました。お目当ての企画展と併せて、他の企画展も手軽に楽しめるのがアムステルダム市立美術館の魅力です。

外国人観光客の間では、あまりメジャーな美術館ではありませんが、ユニークな雑貨のそろうミュージアムショップや、待ち合わせに便利なラウンジ、ミュージアムカフェ、レストランなど施設も充実しています。

ミュージアム広場を訪れる際は、アムステルダム国立美術館やゴッホ美術館のすぐ傍にある、アムステルダム市立美術館にぜひ足を伸ばしてみてください。

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Kayo Temel

オランダ在住。アムステルダムの美術アカデミーで絵画を学び、イラストレーターとして活動中。20年の在蘭経験を活かして、オランダを満喫するためのローカルな情報をお届けします。

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