【第1話】イタリア中世の家のまどろっこしい改装プロジェクト

イタリア在住3年目にして、ひょんなことから中世の家を取得・改装するという、とんでもない計画にとりかかることになりました。時間のかかる書類手続き、スローテンポで行き当たりばったり的な仕事の進め方、次から次へと発生する仰天事件に振り回され、マイホーム完成の日は果たして来るのか!?

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目次

詩人の家と運命の出会い

コートダジュールにつながる西リヴィエラ海岸からほど近い、中世の家が山の斜面に張り付くように築かれた山岳村に、のちに我が家となる物件は在りました。村のピアッツァ(中心広場)に我が物顔でどっしりと腰をおろす、1300年代に建てられたという石造りの建物。かつては有力者の屋敷の一部で、有名な詩人の生家でもあったというその家は、長いこと放置されたままで、手をつけずに住めるような状態ではありませんでした。

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縦に細長い4階建てのその物件は、階段の多い典型的なリグーリア州の歴史的建築物で、アーチ型の高い天井、地中海に向かって連なる山々が見渡せる屋上のテラス、そして何と言っても18世紀の詩人がそこに住んでいたという真実にいたく惹きつけられました。

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埃っぽく、ひんやりした建物に足を入れると、かつて誰かがそこで生活していたらしい不気味な気配と、どこか懐かしく不思議な感覚に襲われます。薄暗い中、部屋の輪郭をぼんやり眺めていると、美しく息を吹き返したその部屋の幻想が脳裏にくっきりと浮かびあがってくるという、まさに運命の出会いでした。

コネを頼りに無謀な(?)決断

何をするにも並々ならぬ時間と労力を必要とするイタリアで、改装の必要がある家を購入するなどあまりにも無謀すぎるのではないか、と、当初は慎重で懐疑的だった私とパートナーでした。とはいえ、賃貸・販売を問わず、即入居可能な物件で気に入ったものが見つからないまま住宅ジプシー3年目を迎えた私たちは、切実に安住の場所を求めていたのです。

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古い建物の改装には数々の規制があり、手続きから工事まで長期間を要する事はたびたび耳にしていました。実際、知人夫婦は理想の家を見つけ、改装をして住み始めるまで7年を要したと言います。幸い、義弟が建築家であるうえ、5年間の任期で村の代表を務めている最中という願ってもいない状況です。全面的に協力するから、という彼の言葉を信じると同時に、コネが全てのイタリアでこれは天からの助け以外の何ものでもないと確信し、2013年6月、中世の家を改装する、という一大決心をしたのでした。

何をするにも、ピアーノピアーノ(ゆっくりゆっくり)

改装にあたり、建築家(または土地測量技師)が電気配線、配管を含む設計図を作成し、それを含む申請書類を役所に提出。改装許可が下りるのを待って工事開始、と聞けば一見単純なプロセスです。全て上手くいくはずだよ、と根拠のない自信に取りつかれていた私とパートナーでしたが、滑り出しからの物事の進まなさにはさすがに閉口しました。未来の新居に盛り上がる私たちをよそ目に、国内はバカンスシーズンに突入し、肝心なプロジェクトは本格的に始まる前から一旦停止、という有様です。

暑さの盛りが過ぎて海岸を賑わせていた観光客が去り、周辺にいつもの静けさが戻ってきた秋口に、建築家(つまり義弟)との待望の打合せの場が設けられました。ところが、古い時代に造られた間取りをどのように効率的に最大限に活かすか、という課題に加え、私たちの希望と彼の意向が平行線をたどるばかりで、肝心な設計図が完成する目処が全く立たぬままです。そうこうしているうちに、早くも年の瀬が近づいてきました。

改装決断からすでに半年...

スローなペースに慣れず、何とか事を進ませようと先走りがちな私とパートナーは、許可が下り次第すぐに工事が始められるよう、自分たちなりに準備を進めることにしました。クリスマス休暇を目前に、自分たちで手配すべき(であろう)事をリストアップするうちに課題が山積みであることに気付きました。電気工事士、配管工の選定、工務店に見積もりを出してもらう事の他に、タイルや壁の色選び、キッチンや浴室の器具、ドアや窓枠、スイッチや電源差込口、照明器具、暖房システムの選定等々。近辺にホームセンターのような大型専門店が皆無なため、タイルとペンキ以外のものは全てネット上で注文することにしました。毎日コンピューターと睨めっこの日々ですが、我が家になるべく新居のイメージがどんどん膨らみ、気分は高まるばかりです。

楽観的すぎる私たちは、終わりのない戦いが始まることになろうとは想像すらしませんでした。

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サルシ なおみ

イタリア・リグーリア州の小さな村で田舎暮らしを満喫中。自家製のワイン・オイル作りにいそしむ傍ら、築700年の自宅の改装にも精を出す日々を送っています。

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