200年以上の歴史を持つ伝統行事「虫送り踊り」

島根県邑南町の鹿子原(かねこばら)集落で毎年7月20日に行われる伝統行事「虫送り踊り」が今年も開催されました。200年以上続く、五穀豊穣と害虫防除を願う風習で、県指定無形民俗文化財に指定されています。

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花笠に浴衣、紅タスキ姿の男衆が、腰に太鼓をつけて踊りを披露します。大太鼓、小太鼓、囃子型の笛、鉦、歌い手など、総勢15~16人が地元の神社で歌や踊りを奉納して出発。

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乗馬姿のワラ人形を中心にあぜ道を一列になって練り歩きます。

このワラ人形は平家の武将・斎藤実盛に見立てたものです。実盛は源平の合戦で乗っていた馬が稲の切り株に足を取られたところを討ち取られたため、稲を食い荒らす害虫になったという言い伝えがあります。(稲の害虫である稲虫は「実盛虫」などと呼ばれることも)そこで、実盛の霊を慰め、さらに害虫を追い払う意味を込めて実盛に見立てたワラ人形を「虫送り」に登場させるようになったといわれています。

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踊り装束は鮮やかな紅色が目を引きます。太鼓のバチにつけた虫垂れと呼ばれる飾りは食紅で染められており、これは祭りの時期に咲く合歓の花の色を模しているとか。確かに虫垂れの紅色が刷毛のように広がる様子は、傘状に開花する美しい合歓の花に似ています。

「虫送りの唄」に合わせて行進し、公園や商店街など町内の15ヶ所ほどで踊りを披露しながら目的地の神社へ。最後に踊り装束の花笠や虫垂れなどの飾り類をまとめて燃やすことで、行進によってよびよせた害虫を焼き払います。

害虫を防除し、その年の豊作を願う「虫送り」は全国各地で行われていましたが、農薬の普及などにより現在ではその大半が消滅してしまいました。鹿子原の虫送り踊りは、古型を残す全国でも希少なものです。何万人もの人が訪れて地域が熱狂するような行事ではないですが、小さな集落で行われる素朴な祭りだからこそ、ぜひ今後も伝統を残していってほしいと思います。

写真:島根県感光写真ギャラリー

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日本各地の食や文化を体感するため、休みがとれると全国へ赴く。特に昔から続く風習などに興味がある。

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